理念・達成目標

総合地球環境学研究所(地球研/RIHN, Research Institute for Humanity and Nature)は、下記のようなビジョンとミッションを掲げ、地球環境問題の解決への貢献をめざした研究活動を進めます。

ビジョン

地球研は、地球スケールで地域から⼈と⾃然の関係のあるべき姿を描き、平等かつ公平で、未来可能な地球社会の実現を⽬指します。

ミッション

地球研は 2001 年に創設され、2004 年には⼤学共同利⽤機関法⼈⼈間⽂化研究機構の⼀員となりました。⼤学共同利⽤機関として⼤学単独ではできない研究基盤を提供し、⼈⽂学・社会科学・⾃然科学の⽂理融合による学際研究に加え、社会と連携・協働した超学際研究により、「⼈と⾃然の相互作⽤環」を根源的かつ包括的に理解し、地球環境問題の解決に向けた実践を⽬指す「総合地球環境学」を先導します。

地球研は、地球環境問題を人類共通の課題と認識し、さまざまな学問分野の基礎をもとに研究に取り組んでいます。そのなかで、従来とは少し異なった視点からアプローチしています。それぞれ個別の学問分野が研究を重ねても、それだけでは地球環境問題の本質に迫れないのではないか、必要なのは部分的な理解ではなく、人と自然が相互に作用して形作る関係性(相互作用環)を全体として理解できることが重要ではないかと考えました。これを実現するために、人文学・社会科学・自然科学の文理融合による学際研究に加え、社会と連携して問題解決をめざす超学際的アプローチを含めて、総合知としての「総合地球環境学」を推進しています。

地球研は、2001年、「地球環境問題はことばの最も広い意味における人間の『文化』の問題である」と説いた日髙敏隆博士を初代所長に迎えて発足しました。自然を畏敬するのも、冒涜するのも、あるいは自然を自分たちの一部であると感じるのも、利用すべき資源とみなすのも、文化の問題であると考えます。さらには、現在の地球上のさまざまな文化だけでなく、過去の文化にも学ぶ必要があります。そのなかでの大切な課題は、文化は地域の自然に根差すものだという認識に立ち、今後私たちはどのような自然観(地球観)に基づく文化を、つまりどのような人と自然の関係を地球スケールで築き上げていくべきかということです。

この課題に対して、私たちはよく使われている持続可能性を超えた「未来可能性」という考え方を掲げました。今ある問題が何なのかを理解したうえで、私たちの孫、ひ孫の世代、さらに未来の世代に、今以上に住みよい地球を遺すために、私たちが何をすべきかを考えること、つまり私たちの今の生活が持続すること(持続可能性)以上に、未来世代がよりよく生存しつづけていける可能性(未来可能性)を模索することが大切だからです。

地球研が設立された2001年にはパリで行われたユネスコ総会で、「文化的多様性に関する世界宣言」が締結されました。この第1条には「生物的多様性が自然にとって必要であるのと同様に、文化的多様性は、交流、革新、創造の源として、人類に必要なものである」、第3条には「多元的であり多様で活力に満ちた文化的アイデンティティーを個々に持つ民族や集団同士が、互いに共生しようという意志を持つとともに、調和の取れた形で相互に影響を与え合う環境を確保することは、必要不可欠である」と述べられています。情報通信革命が進展し、地球の総人口の約半分を都市居住者が占める今日、文化の多様性とその価値観が急速に失われつつあります。現代は、人類活動の影響が地球の隅々まで顕在化した新しい地質年代である「人新世(あるいは人類世)」に入ったともいわれています。限られた資源の枯渇、生物圏の劣化、大気圏・水圏の汚染が地球規模で進行しつつあり、問題は山積みです。国連のSDGsでも掲げられているこれらの問題を人類共通の課題として解決するためには、多様な価値観を生かしつつ、さまざまな対話や交流を通じて、新たな価値を創造する必要があります。「未来可能性」は人と地球の未来のあるべき姿を考える「総合地球環境学」をより一層確立するために、私たちが込めた思いを表したものです。

総合地球環境学を達成するために、地球研は、人文学・社会科学・自然科学の学術基盤の上に、それらをまたぐ学際研究と、さらに社会とも連携・協働した課題解決型の超学際的な研究をおこないます。私たちは、研究は実社会の問題解決に資するものでなければならないと考えており、研究者と社会の人々が協力して課題をあぶり出し、新しい枠組みと解決方法を見出すための、協創的なアプローチを推進します。